『イル・ポスティーノ』撮影後12時間後に亡くなった俳優の

イル・ポスティーノという映画をご存じでしょうか。マイケル・ラドフォード監督が1994年制作したイタリア映画です。

主演のマッシモ・トロイージが心臓病をおして撮影にのぞみ、撮影終了後の12時間後に亡くなったことでも話題になった『イル・ポスティーノ』。

イル・ポスティーノって言われると何の事かわかりにくいかもしれませんが、英語に直せば『The Postman』となり、つまりは郵便配達員の話なのです。

ノーベル文学賞も受賞したことがある実在の詩人パブロ・ネルーダ

彼が祖国チリから亡命し、イタリア南部、ナポリ湾に浮かぶカプリ島に身を寄せていたという史実に基づき、その島で出会った内向的な青年(郵便配達員)との交流を描いた映画です。

イタリアと言えばオシャレで文化的なイメージが強かったのですが、この島では水道も敷かれておらず、島民のほとんどが文字を読めないという場所。

そこで育まれていく郵便配達員と詩人の友情がじわじわっと心に沁みていきます。

決してド派手な演出やストーリーではないので、好みがわかれそうではあります。

しかし、役者さんの演技は誰もが胸を打つ物になっているでしょう。

という事で、映画『イル・ポスティーノ』のレビューをしていくことにしましょう。

やはり詩ってすごい…。

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映画『イル・ポスティーノ』 – あらすじ

イル・ポスティーノ
4.6

公開日:1994年9月22日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マイケル・ラドフォード
主演:マッシモ・トロイージ, フィリップ・ノワレ, マリア・グラツィア・クチノッタ

イタリアの小さな島に住む内気な青年マリオは父親と一緒に漁師をすることがどうしても出来ず、文字を読める事から郵便配達員の仕事に就く。届け先はただひとつ。チリから亡命してきた詩人パブロ・ネルーダの家だけだった。やがてパブロの影響でマリオは文学に目覚め、町で出会った女性ベアトリーチェに恋をする。自分の気持ちを言葉にして表現する事をパブロから学びながら二人は親交を深めていくのだが…

映画名作レビュー戦記シネマネオン!-イル・ポスティーノの巻-

前回までのシネマネオンは…

 館見放題
とある映画館でポスター貼りのアルバイトをしていた館見 放題(たちみ ゆきみつ)。「映画と詩は違うだろう」と言いながら映画ランキングと興行収入を参考におすすめポスターを入れ替えていたが、その作業中、謎の組織ノーモアーズに襲われ記憶と顔を盗まれてしまう。何も思い出せない館見。彼は自分を取り戻すため、引き込まれるように映画館に入り『イル・ポスティーノ』を観ようとしたのだが…

映画『イル・ポスティーノ』 -内容紹介-

館見 放題
ち、畜生!なんだったんだ。あの赤い顔の男は…。何かを思い出せそうだったのに、映画館から追い出されてしまった。『イル・ポスティーノ』とは一体どんな映画なんだ…。
シネマネオン
一言で言えば、“青年の成長と友情の映画”だな。マイケル・ラドフォード監督の4番目の作品さ。
館見 放題
だ、誰だ!?
シネマネオン
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。レビューロボ、シネマネオンだ!
館見 放題
だから誰やねん!誰もオマエの事なんて呼んでないぞ!
シネマネオン
まぁまぁ、落ち着きなさい。今の君の体ではきっと映画館から追い出されてしまうだろう。アレに非常に似てるからね。アレに。
館見 放題
アレとはなんだ!僕は自分が誰だか思い出せないんだ。
シネマネオン
君は『イル・ポスティーノ』を観たかったんだろう?
館見 放題
そうだった。『イル・ポスティーノ』を観れば何かを思い出せそうなんだ。
シネマネオン
では、私と合体しなさい。期間限定レンタルロボ貸出中、今だけ非常にお得だよ。
館見 放題
怪しさ満点じゃないか!合体って何を…
シネマネオン
ええい。やってみればわかる。君の持っているそのスマホのアプリのボタンを押せ!
館見 放題
いつの間にこんなアプリが!ちくしょー!!こうなりゃヤケだ!ポチッと!
シネマネオン
アジャラカモクレン、イル・ポスティーノ、テケレッツのパー
館見 放題
うわああーー!『イル・ポスティーノ』の映像が頭のなかに広がっていくぅぅぅぅうう!!

映画『イル・ポスティーノ』 -解説-

シネマネオン
前回はスペイン映画で今回はイタリア映画だな。
館見
しかも1995年と1994年で年代も近いな。何か1990年代ブームでも来ているのか?
シネマネオン
いや、たまたまさ。しかし、あの頃の映画は色々な事を考えさせられるね。
館見
今回のイル・ポスティーノってどんな映画なんだ?
シネマネオン
まずは作品紹介といこう。舞台はイタリアの小さな島。年代としては特に明記されていないけれど、1950年代初頭辺りだろう。原作は1960年代後半から1970年代前半らしいのだけれど。
館見
ん?この映画に原作があるの?
シネマネオン
アントニオ・スカルメタというチリの小説家の1985年の作品『ネルーダの郵便配達人』が原作だな。
館見
ほほう。
シネマネオン
その小説を今作の主演を務める、マッシモ・トロイージという俳優さんが惚れ込んでね。彼は監督業もやっていたからイギリスの友人マイケル・ラドフォードに頼んで、映画化を進めていったんだ。
館見
俳優であり監督も出来るってすごいな。
シネマネオン
それで原作では17歳の青年マリオが主人公なのだけど、マッシモ・トロイージは当時40歳を過ぎていたから、さすがに無理だろうという事で30歳という設定になった。
館見
ふーむ。主人公は30歳のマリオ。
シネマネオン
それでまぁ、なぜ舞台が1950年代かと言えば、後にマリオの友人になる実在の詩人、パブロ・ネルーダは詩人であると同時に外交官を務めていた人物で、共産党員の政治家だったから、当時のチリの政府に厄介者扱いされて、1949年に国外追放されて、イタリアに亡命をするんだ。
館見
共産党員かぁ。イタリアとは相性が良さそうだな。確か戦後の共産党の中でも異例な支持率があった国だよな。
シネマネオン
それから3年間ほど亡命先を転々としていたのだけれど、国外追放の逮捕状が取り消されるちょっと前、実際にパブロ・ネルーダはイタリアのナポリ湾に浮かぶカプリ島という所に住んでいたのだよ。
館見
じゃあ今回はそのカプリ島というのが舞台なんだな。
シネマネオン
まぁ、架空の漁村でマリオという人物も架空の存在ではあるのだけれどもね。そういう史実を元に作られたって事だ。撮影場所もカプリ島ではなくプローチダ島で行われたみたいだし。
館見
大体舞台設定はわかった。ストーリーはどんな感じなの?
シネマネオン
内気な性格のマリオ・ルオッポロは漁師の父と暮らしているのだけれど、どうにも漁師が自分の体に合わず働けなかった。まぁ怠け者体質だったわけだ。
館見
今風に言えばニートか。
シネマネオン
それで父からアメリカでも日本でもどこでも良いから働けと言われるんだけれど、チャリに乗って映画館に遊びに行く。
館見
なんてマイペースな性格。
シネマネオン
なぜ映画館に行ったかと言えばニュース映画がやっていて、そこで自分たちの漁村が取り上げられたからなんだな。パブロ・ネルーダの亡命先としてね。
館見
ほほう。確かに小さな村だったら映画で放送されるってなったら見に行くかもな。
シネマネオン
その映画館からの帰り道、貼り紙を見つける。「郵便配達人募集、要自転車」とね。ちょうどチャリは持っているし翌朝行ってみることにした。
館見
ふむ。そういうのってめぐり合わせだよね。
シネマネオン
まず聞かれたのは「読み書きが出来るか」だった。マリオの住む場所で字が読める人は稀だったからね。
館見
あー、今じゃ読み書きが出来るのが当然みたいに思われているけど、たしかに知り合いにも自分の名前を書けないおっちゃんいたわ。書類書く時は人にお願いするんだってさ。
シネマネオン
マリオは無知だったけれど、読み書きだけは出来た。そして話を聞いてみると、届け先はマリオの住む場所付近らしい。しかし届け先は1ヶ所のみ。それが詩人のパブロ・ネルーダ。
館見
ほほー。そうやって出会うわけだ。
シネマネオン
まぁ、その当時の給料は非常に安くて、配達先の人からのチップ頼みみたいな事があったらしいんだけど、1ヶ所しか行かないからほとんどもらえない。
館見
えー。それじゃあ働く意味ないじゃんか。
シネマネオン
それでもマリオは昨日のニュース映画でパブロがやたらめったら女性にモテモテだったのを観てたから、自分もモテるようになりたいと仕事を引き受けるのだよ。
館見
下心w
シネマネオン
当然、そんな感じでパブロに接して、モテる為にサインをねだったりしたから、最初はパブロもマリオを冷たくあしらっていた。サインにマリオの名前を書かなかったりね。
館見
そりゃそうだわな。
シネマネオン
しかし、サインを貰うために買った詩集を読んでみるとマリオは徐々に詩の世界に興味を持つようになった
館見
ほう。
シネマネオン
読んだ詩についてパブロに質問する事をきっかけに徐々に二人は打ち解けていく。
館見
おお。なるほどな。
シネマネオン
隠喩という言葉を教えてもらったマリオは、今まで観ていた世界がすべて違って見えるようになった。そんな時マリオは一人の女性に一目惚れをする。
館見
お、マリオの春。
シネマネオン
その時に何の言葉も出せなかったマリオはダッシュでパブロに会いに行き、助言を仰いだ。
館見
ダッシュで。
シネマネオン
彼女の為に何か詩を書いてくれとお願いするマリオ。しかしパブロは知りもしない女性の事など書けないと断る。後日パブロはマリオに隠喩の勉強の為にと本を贈る。
館見
ふむ。
シネマネオン
パブロはマリオを連れて、マリオの一目惚れの女性ベアトリーチェが働く店へ行く。そして彼女の前で、マリオのノートに「私の親友で同志のマリオにパブロ・ネルーダ」とサインをしてあげるんだ。これで君は今日から詩人だと。
館見
おお。最初の出会いの時は、マリオの名前を書かなかったのに、粋な計らいだね。
シネマネオン
それからマリオはベアトリーチェに会う度に隠喩で言葉を贈る。
館見
徐々に詩人になっていくわけだ。
シネマネオン
が、ベアトリーチェはその贈った言葉のメモを母親代わりのおばに見つけられてしまう。そこに書かれていた淫靡な雰囲気を持つ詩に激怒し、もし近づいたら銃をぶっ放すよと脅されてしまうのだが…。
館見
だが…。
シネマネオン
という感じであらすじ紹介はここまで。だいたい半分ぐらいまでかな。
館見
えー。もう少し話を聞きたかった。
シネマネオン
この映画の中にこんな言葉がある。

君が読んだ詩を別の言葉では表現できない。詩は説明したら陳腐になる。どんな説明よりも、詩が示す情感を体験することだ。詩を感じようとすればできる。

館見
ふむ。
シネマネオン
この映画も説明したら陳腐になる。実際に観てみて感じてほしいものだな。
館見
映画と詩は違うだろうに。さては説明するのが面倒くさくなったのだな…
シネマネオン
アジャラカモクレン、レビューラビュー、テケレッツのパー
館見 放題
アァ、消える……

映画『イル・ポスティーノ』の批評を終えて

館見 放題
映画と詩は違うだろう!!…ん?あれ?ここは?あ、ポスターの前か。
館見 放題
あー、今回は『イル・ポスティーノ』推しなんだな。このポスター貼って、次の試写会の会場に行く前に、ささっと限定20杯の燻製ラーメン食べに行かなくちゃ!あー。腹が減ってきたなぁ。急がなくっちゃ!!
館見 放題
それにしても、この「映画名作レビュー戦記シネマネオン!」とかいう知らない映画の前売り券を支配人にもらったけど、どうしよう…。一緒に見に行ってくれる人なんていないしなぁ?。

映画『イル・ポスティーノ』の名言・心をざわつかせた言葉

詩人は偉大で広い心の持ち主だ

玉ネギを持っていても詩人は詩作ができる。

君は一方的に浴びせている。比喩と隠喩を。

人間というのは、物事の単純さとは関係がないのさ。

配達人を続けた方がよほどいい。たくさん歩いて太らない。詩人は皆、太りすぎだ。

「どうすれば詩人になれるんですか?」「入江に向かいゆっくり岸を歩きなさい。周囲を見ながら」

「恋をした」「それは結構だ。治せる」「治すなんてとんでもない。治りたくなんかない。おれは恋をした。恋をしたんです」

多くのベアトリーチェが恋を生み出した。

崇高な思想でも聞きすぎると寝言になる。

あの男の財産はせいぜい水虫しかない。

顔は真っ青でも、心の中は真っ赤だ。

詩は書いた人間のものではない。必要な人間のものだ。

あなたが帰った時、すてきなものはみんな持って帰ったと思った。でも本当はいろいろなものを残してくれたんだ。

動画視聴で映画『イル・ポスティーノ』を実況・解説!

シネマネオン
今回の動画実況はDVD版を観て行っています。
  • 0:04:50頃
    日本ってイタリアの田舎の漁師でも話題にあがる国なんだな。
  • 0:07:05頃
    ん?これは映画っていうかニュースなんじゃね?映画館でニュースを流すものなのだな。
  • 0:10:05頃
    一生懸命働いて、週に一度の映画代。それで結構ですと言える主人公かっこいい。
  • 0:10:15頃
    共産党員は敬称をつけなくていいのか。知らないことばかりだな。
  • 0:11:10頃
    帽子を馴染ませないと頭が痛くなるのか。豆知識満載だ。
  • 0:12:35頃
    郵便が多いな!ひとりの人間にこんなに届くのか。
  • 0:14:45頃
    詩人に対するイメージが斬新だわ。
  • 0:16:05頃
    郵便配達人が頼み事をするのは禁じられている!?まじかよ。知らんかった。
  • 0:18:10頃
    わからんでもないが、だいぶ自我が強い若者だな。
  • 0:23:25頃
    ハラハラするけれど、詩人と会話して楽しそうだな。クビになりませんように。
  • 0:28:30頃
    無言で表現する所がいいな。
  • 0:30:15頃
    そうだよなぁ…。水が出る事を当然の事だと思っちゃいけないんだよな。
  • 0:32:05頃
    言葉に魅せられるとはこの事だ。
  • 0:33:40頃
    あ!!なんかこの詩人のおっちゃん見たことあるんだよなって思ってたが、『ニュー・シネマ・パラダイス』のアルフレードじゃないか!!道理で人に教える様子が様になっているわけだ。
  • 0:35:15頃
    こういうレトロなゲームいいなぁ。
  • 0:41:55頃
    喧嘩しちゃったよ…。
  • 0:48:15頃
    ここのやり取り最高かよ。いいなぁこういう雰囲気。優しい気持ちになるわぁ。
  • 0:51:30頃
    ベアトリーチェさんの瞳は難しいなぁ。感情が読み取れない。
  • 0:57:10頃
    この詩人の奥さん、本当に美しい人だな。レコードをかけて振り向いただけなのに、魅了される。
  • 0:59:25頃
    このおばちゃんなぜそんなに反対するのかと思ったら、結局お金かぁ…。まぁそうだよな。
  • 1:03:15頃
    盗作かよw急に上手くなりすぎてない!?って思ったんだよな。
  • 1:03:35頃
    この詩人の笑顔、本当に素敵だわ。
  • 1:09:15頃
    マジで猟銃抱えて外に出てきて草生えるw
  • 1:10:35頃
    この司祭さま、偏見がすごいな。
  • 1:15:30頃
    もうこのままハッピーエンドで良い気がするけど、これからどうなるんだろう。まだ30分以上残ってるけど。
  • 1:17:55頃
    あぁ。友情っていいなぁ。じわっとくるわ。
  • 1:24:00頃
    不穏な空気が。ベアトリーチェの瞳に吸い込まれる。
  • 1:30:30頃
    なんか色々と切なくなるな。マリオ、自分を責めないでくれ。
  • 1:38:55頃
    吐き出す言葉が立派な詩人だよ、マリオ。
  • 1:41:15頃
    まじかよ…。嘘だと言ってくれ。

映画『イル・ポスティーノ』 – オチ・エンディング・ラストの感想・考察

ここから先はネタバレを含む場合がございます。まだこの作品を観ていないあなたはこのままページを閉じるか、覚悟の上でお読みください。

by シネマネオン


ここから

前回の『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』と同様、今回も終盤で人が死んでしまうラストでした…。

あんまりそういうラストは好きではないんですけどね。

しかし、今回は時代背景的にそうするしか無かったのかなぁ…とも思います。

それにしても自分に自信がなさそうなマリオの最後の録音は素晴らしいものでした。

郵便配達員として、町の美しいものを録音して届けるという発想、そしてそのタイトルの付け方。まさに詩人でした。

普通思いつかないよ!

パブロと出会った当時は言葉に出来なかった町の美しいもの。

それを形に出来るまでに成長したマリオ。

その命が共産党の集会で起きた暴動により若くして奪われてしまいましたが、演じたマッシモ・トロイージもこの映画の撮影後12時間で亡くなってしまったという事実が、妙に共鳴します。

そしてそのマリオが残した録音を、実際にマッシモ・トロイージと親友だったフィリップ・ノワレが演じるパブロがなんとも言えない顔で聞き入るシーン。

ネオレアリズモという潮流が1950年代のイタリアで生まれたように、この映画が妙なリアリズムを放ってくるのは、そういった作品と制作側の共鳴の一致が生み出しているものなのだろうなぁと思いました。

死んでほしくはなかったけれど、命を削ってでも演じたマッシモ・トロイージだったからこそ、ラストはやはりマリオも亡くならなければならなかったのだと。

そう思います。うん。

シネマネオン
これがネタバレだと言うのか…!?

イル・ポスティーノのような映画・似てる作品・おすすめ

ニュー・シネマ・パラダイス
4.4

公開日:1988年11月17日
ジャンル:ヒューマンドラマ映画
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
主演:フィリップ・ノワレ, サルヴァトーレ・カシオ, マルコ・レオナルディ

館見
1988年のイタリア映画『ニュー・シネマ・パラダイス』です。完全にフィリップ・ノワレに引っ張られています。劇場版と完全版で全く解釈が変わる珍しい映画ではありますが、よりフィリップ・ノワレのラストが光を放つ完全版の方をオススメしておきます。出来ればどっちも観てもらいたい。

映画レビューまとめ


イル・ポスティーノのレビューをしていきましたが、芸術と政治という真逆のように思えるものをバランス良くまとめあげた良い作品だと思います。

芸術も政治も同じように人の心を動かすものではありますが、戦争などで必要とされるのは政治で、一番に排除されるものは芸術であるように、その立場は全く違います。

しかし、ひとりの若者は詩に出会う事で、人生が変わり、詩に関わった事で、政治に傾倒していきました。

これほど強く、政治って一体何やねん…と思わせるメッセージの表し方はないのではないでしょうか。

途中でたびたび現れる政治家のコシモの描き方もね、上手なんですよね。

確かに目の前に人参をぶら下げて、人々の票を集めていきます。人々の心を動かしていくわけですが、当選した瞬間に人参は取り除かれ、人々は騙された事を知ります。

一方、この映画を見た人が感じるようにラストのシーンのマリオの生み出した詩は、人参のように消えたりはせず、いつまでも深く心に残っていくでしょう。

…いや、僕が言いたいのはこういう事ではないな。

とにかく優しい雰囲気が流れている映画なんですよ。うん。この映画の良さを説明すると↑こんな感じで失敗します。なのでとにかく肌で感じ取ってもらいたい。

音楽もいいし、ストーリーもいい。景色も良いし、何よりも演じているマッシモ・トロイージとフィリップ・ノワレがすこぶる良いのです。

一度全てを見た後に、もう一度マッシモ・トロイージだけに集中して観ると、彼はどのシーンでも額に脂汗をかいている事がわかります。

この映画を撮ったマイケル・ラドフォード監督は一日撮影が終わる度に「明日はあるのだろうか…」と心配していたそうです。

今すぐにでも心臓の移植手術が必要なほど心臓病の病状は進んでいましたが、「映画こそが僕の生命。新しい心臓を手に入れる前に、古い心臓をこの映画に捧げるんだ」と語ったマッシモ・トロイージ。

そして映画内だけでなく、実際にマッシモ・トロイージの親友だったフィリップ・ノワレはマッシモ・トロイージを励ましながら撮影にのぞんだらしいのです。

…そりゃー優しい雰囲気に満ちあふれている映画になりますよね。

だからこそ、説明不要。とにかく観て感じて楽しんでください。きっと素晴らしい映画体験になることでしょう。

ということで『イル・ポスティーノ』でした。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

野口明人

あ、最後に『イル・ポスティーノ』のレビュー点数です↓


イル・ポスティーノ - 感想・評価

イル・ポスティーノ
4.6

公開日:1994年9月22日
ジャンル:伝記映画, コメディ映画, ヒューマンドラマ映画
監督:マイケル・ラドフォード
主演:マッシモ・トロイージ, フィリップ・ノワレ, マリア・グラツィア・クチノッタ

イル・ポスティーノ
  • ストーリー - 91%
    91%
  • キャラクター - 95%
    95%
  • 演出 - 96%
    96%
  • 映像 - 90%
    90%
  • 音楽 - 90%
    90%
92%

映画レビューまとめ

ストーリーもいいし、キャラクターもいい。映像は美しいし、ダンスなどに流れる音楽も素敵です。ここまでバランス良く点数をつけたのも久しぶりな気がします。もちろん派手さはないので好みはわかれると思いますが優しい雰囲気の映画が好きならば、ぜひ。

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