『十二人の怒れる男』はオセロだ!最初の状況が裏返っていく

十二人の怒れる男をご存知でしょうか?1957年の古い映画です。ジャケットはカラーになっていますがモノクロ映画で、豪華なCGも派手なアクションも壮大な風景もないけれど、これほど面白い作品は珍しい。

法廷ものというジャンルに分類されるらしいのですが、ほぼ一つの部屋だけで展開される物語にも関わらず、むちゃくちゃ面白いのです。

色々なサイトで密室劇の金字塔といつも話にあがっていたので映画『十二人の怒れる男』を観てみたわけですが、期待を遥かに超えてきた映画でした。

早速レビューをしていくことにしましょう。

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映画『十二人の怒れる男』 – あらすじ

十二人の怒れる男
4.2

公開日:1957年04月13日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:シドニー・ルメット
出演:ヘンリー・フォンダ, リー・J・コッブ, マーティン・バルサム

父親殺しで罪を問われている17歳の少年。陪審員制度によって、12人の陪審員により有罪か無罪かの審議が行われる。

法廷に提出された証拠や証言は明らかに少年を有罪と示していて、陪審員の審議もほとんど有罪の流れですぐに決まると思われていた。

陪審員制度の決まりにより全員一致が規則となっており、形の上で決を採ってみる。すると一人の男性が無罪と主張してきた。

他の11人にへそ曲がりがいると批難されながらも、冷静に無罪と主張する論理を展開していく…。

こんな感じのあらすじです。

すべての話はひとつの部屋で行われる

この映画の特徴として、ほとんどのシーンをひとつの部屋で行われる密室劇であること。ほぼ同じ背景で特に際立った激しい動きもなく、あるとすれば時折トイレに立ち入るシーンがあるだけ。

なおかつモノクロ映画なので現代のCGや壮大なカメラワークに慣れてしまっている僕らの感覚からすると退屈だと感じてしまう状況が揃っている映画と思われる。

しかし、不思議と飽きもしないし単調だとも思わない。シーンがほとんど切り替わらないこともそれほど気にならない。気が付くとのめり込んでいて、映画のエンディングロールが流れていた。

そう。

この映画は俳優の演技ひとつだけで映画を「魅せている」作品なのだ。モノクロ映画でわかりにくい映像からでもこの部屋の蒸し暑苦しさが伝わってくる。切迫し、白熱した演技によってそう伝わってくるのだろう。

人間の感情と感情のぶつかり合いが熱い!

とにかく主人公がかっこよすぎる

国の機関から無作為に選ばれた様々な性格の12人の陪審員。野球のナイターを観に行く予定の為に早く帰りたいと思っている人や、自分の息子との確執から若者に偏見を抱いてしまっている人や、自分の意見を持っていない人や、差別意識が高い人など。

ひとりとして顔見知りがおらず、お互いの名前すら知らない。こういう場面に陥ると普通は波風を立てずに多数を占めている意見に流されるのが人間の性だと思うのだけれど、その中で自分の意見をしっかりと持ち、自分の違和感を正直に打ち明けられる主人公。

最初は1対11だった状況。それが2対10になり、3対9になり、6対6になり、最後には12対0にまで持っていく。それはまさにオセロのゲームのよう。一面、黒に覆われた盤面にたった一点の白。誰もがすぐに負けると思っていた試合だったが、試合が終わってみるとすべて真っ白に変わっている。

かっこいい。かっこよすぎる…。

本物のヒーローの条件

どうやら、2003年にアメリカ映画協会が選んだアメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100で、この映画の主人公、「陪審員8番」がヒーロー部門第28位にランクインしたらしいです。

多くの人々がこの映画の主人公にヒーロー性を感じたみたいですね。世の中にはたくさんのヒーローがいて、ただ単に悪を倒せばそれだけでヒーローみたいな風潮がある気がしますが、その多くはあまり心に残らずに廃れてしまう。

ではなぜこの映画の主人公にはヒーロー性を感じる人が多かったのか。

それはヒーローの条件として、「最初は受け入れられない」という条件が存在するからなんじゃないかな?とこの映画を観て思いました。

多くのヒーローは当然のように存在して、最初っから当然のように「味方」「正義」として受け入れられている。そこに見てくれのカッコよさがあっても勇気はない。でも、歴史を振り返って先導者や革命者、本物のヒーローと語り続けられる人達、たとえばマーティン・ルーサー・キング・ジュニアやガンジー、ジョン・レノンのような人達は多くの人達が思っていても怖くて言えなかった事を大きな声で叫んだのです。

多くの人の意見に流されずに自分の意見を叫ぶその姿に「勇気」を見出し、そこにヒーロー性が現れてきた。この映画の主人公のように1対11の状況が最初にあった。それを11対1、12対0にした条件があったから本物のヒーローになれたんじゃないかと。

考えてみれば、アンパンマンも今ではアンパンをあげる姿が普通に受け入れられていますけど、最初はみんなに受け入れられない中肉中背の、パンをあげる人間のおっさんだったみたいですし。

まとめ

密室。モノクロ。古い映画。今の僕らの感覚からするとヒットする要素が何一つなさそうな映画ではありますが、今の僕らが観ても充分面白いと思える映画です。役者さんの演技力、脚本、キャラクターの三つが素晴らしいんでしょうね。

はい。

そんな感じで、いろいろなサイトで話題に挙がる理由もなんとなくわかりました。それだけこの映画は面白いのでまだ観ていないあなたはぜひ観てみてくださいませ。

ではでは。『十二人の怒れる男』でした。

あ、個人的には「サイコ」に出ていた探偵役の人がこの映画にも出ていたのでなんか嬉しかったです。はい。


十二人の怒れる男 - 感想・評価

十二人の怒れる男
4.2

公開日:1957年04月13日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:シドニー・ルメット
出演:ヘンリー・フォンダ, リー・J・コッブ, マーティン・バルサム

十二人の怒れる男
  • ストーリー - 90%
    90%
  • キャラクター - 95%
    95%
  • 演出 - 85%
    85%
  • 映像 - 60%
    60%
  • 音楽 - 70%
    70%
80%

映画レビューまとめ

とにかく主人公がかっこよい。そして地味におじいちゃんがきらりと光る。

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