『ゆれる』は邦画にも素晴らしいものがあるんだなと思える傑作!

ゆれるという映画をご存じでしょうか?西川美和監督が2006年に公開した映画です。

オダギリジョーと香川照之が兄弟役で出演する映画なのですが、これがまたなんとも面白いのです。

普段あまり邦画を観ずに洋画ばかり観てしまう僕ですが、『ゆれる』という映画によって、その価値観が変わるかもしれません。

微妙な表現になってしまいますが、もし、あなたが長男長女であれば、ヒューマンドラマとして超おすすめあなたが弟や妹であるならば、ミステリーとしてておすすめって感じの不思議な映画です。

まぁ、冒頭に長々と語ってもあれなので、なぜなのかも含めて映画『ゆれる』のレビューをしていきたいと思います。

もしかしたら、あなたの邦画ランキングがこの映画で変わるかもしれない…

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映画『ゆれる』 – あらすじ

ゆれる
4.0

公開日:2006年05月24日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:西川美和
主演:オダギリジョー, 香川照之, 伊武雅刀

東京でカメラマンとして成功し自由に暮らす弟タケル(オダギリジョー)。実家のガソリンスタンドを継ぎ、毎日お客さんに頭をさげる兄ミノル(香川照之)。母親の法事で弟タケルは帰省し、その時にガソリンスタンドで働く元恋人の智恵子(真木よう子)と再会する。二人は一夜を過ごし、翌日兄ミノルと共に渓谷へ遊びに出かけた。タケルが智恵子を避けるように写真を撮っている中、なんと吊り橋から智恵子が落下してしまうのだが、その近くにいたのは兄のミノルだった…。それは果たして事故か、事件か。

映画名作レビュー戦記シネマネオン!-ゆれるの巻-

前回までのシネマネオンは…

 館見放題
とある映画館でポスター貼りのアルバイトをしていた館見たちみ 放題ゆきみつ「香川照之がすごいって事で良いね!」と言いながら映画ランキングと興行収入を参考におすすめポスターを入れ替えていたが、その作業中、謎の組織ノーモアーズに襲われ記憶と顔を盗まれてしまう。何も思い出せない館見。彼は自分を取り戻すため、引き込まれるように映画館に入り『ゆれる』を観ようとしたのだが…

映画『ゆれる』 -内容紹介-

館見 放題
ち、畜生!なんだったんだ。あの赤い顔の男は…。何かを思い出せそうだったのに、映画館から追い出されてしまった。『ゆれる』とは一体どんな映画なんだ…。
シネマネオン
一言で言えば、“藪の中のようで藪の中ではない裁判映画”。西川美和監督の2006年の作品です。
館見 放題
だ、誰だ!?
シネマネオン
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。レビューロボ、シネマネオンです!
館見 放題
誰もオマエの事なんて呼んでないぞ!
シネマネオン
まぁまぁ、落ち着きなさい。君は、オダギリジョー、香川照之主演の映画『ゆれる』が観たかったんでしょう?
館見 放題
そうだ。『ゆれる』を観れば何かを思い出せそうな気がするんだけど。
シネマネオン
では、『ゆれる』上映1時間59分と書かれたその映画アプリのボタンを押してみなさい。期間限定、登録無料。今だけお得。
館見 放題
いつの間にこんなアプリが!怪しさ満点!ちくしょー!!こうなりゃヤケだ!ポチッと!
シネマネオン
アジャラカモクレン、ゆれる、テケレッツのパー
館見 放題
うわああーー!『ゆれる』の映像が頭のなかに広がっていくぅぅぅぅうう!!

映画『ゆれる』 -解説-

シネマネオン
さて、今回扱う映画は西川美和監督の『ゆれる』です。
館見
魅力的なタイトルの映画だよな。
シネマネオン
そう。近年まれに見る文学的なタイトルな付け方です。だって、名詞じゃなくて動詞がタイトルになっているんですから。
館見
ゆれる。一体何がゆれたんだ?って、まず気になる。
シネマネオン
そしてそのタイトルに釣られた私は、映画を再生してみました。30分後、橋が出てきたシーンを観て、「あー、なーんだ。ゆれる橋のことね」と納得したのです。
館見
え…。そんな安易な意味なの?橋がゆれるで「ゆれる」?
シネマネオン
しかーし。この映画を全て観終えた後の私は「ゆれる」に別の意味を見出したのであります。
館見
ほほう。
シネマネオン
あぁ、なんて意味深なタイトル。邦画だから感じられる、細かい機微。良いタイトルの映画は往々にして、良い映画である場合が多い気がします。
館見
まぁ、ひどいタイトルなのに名作って時も多いけどね。バス男とか。あまりにひどすぎて改題されたけど。
シネマネオン
タイトルも秀逸ですが、この映画、とにかく香川照之がすごいです。
館見
ん?香川照之がどうすごいの?
シネマネオン
香川照之とオダギリジョーが兄弟役として出演しているのですが、香川照之は例えばその昔、リチャード・ギアが主演した『真実の行方』に出てきたアーロンのようなキャラ。「緩」と「急」が効いた人物なのです。
館見
二重人格的な?
シネマネオン
うーん。二重人格とまでは言いませんが、長男ゆえの優しさ、しかし心の奥底に抱える自我を表現している演技がすごいのです。
館見
ふーむ。イマイチ想像出来ないけども。
シネマネオン
もし君が長男長女で、今までに「お兄ちゃんだから」「お姉さんなのだから我慢しなさい」と、自分が選んだわけでもないのに年長者である苦悩を感じた事があるのならどストライクでしょう。
館見
いや。自分、弟側の人間っす。
シネマネオン
かくいう私も、実は弟側の人間。あまりにもわからぬお兄ちゃんの言動や行動に、怖さすら感じました。そして一度観終えた後にミステリーとして感想を書いた事があるのです。
館見
ん?そうなの?
シネマネオン
ですが、長い年月を経て、何かに付けて我慢することが多くなった頃に再び『ゆれる』を観てみると全く違った感想を持ったのです。これは長男のヒューマンドラマであると。
館見
ほほう。どういうストーリーなの?
シネマネオン
オダギリジョーは東京で活躍するカメラマン(たける)を演じています。
館見
ふむ。
シネマネオン
猛は母の法事で故郷に帰ります。
館見
ふむふむ。
シネマネオン
香川照之は猛の兄の(みのる)を演じているのですが、稔は実家のガソリンスタンドを継いだんですね。
館見
東京で活躍するカメラマンと田舎のガソリンスタンドの店長か。すごい対比だな。
シネマネオン
猛は兄のガソリンスタンドに行ったときに、かつての恋人智恵子と再会するんです。智恵子はガソリンスタンドで働いているんですね。
館見
へー。
シネマネオン
猛は智恵子の家に行き、寝てしまう。
館見
あー、久しぶりの再会で燃え上がるやつだな。猛はイケイケだな。
シネマネオン
翌日、稔と猛、そして智恵子は渓谷に遊びに行くんです。
館見
なんかお兄ちゃんの稔は空気読まなそうな感じだな。
シネマネオン
猛としては一夜限りの関係って感じだったんですが、智恵子は猛と元に戻れるような感じで接するんですね。しかし猛は素っ気ない態度を取りながら写真を撮りにどこかに行っちゃう。
館見
でた。いかにも東京の男って感じだ。
シネマネオン
残された稔と智恵子は吊り橋の方に歩いていく。お兄ちゃんの稔は智恵子に好意を寄せている
館見
自分の職場で働くマドンナ的な?
シネマネオン
でも、それが智恵子的には気に入らないんですね。弟の方が好きなのに、兄の方に好かれてしまう。弟に素っ気なくされて、兄に冷たく当たってしまう
館見
お兄さん、可哀想だな。
シネマネオン
んで、場所は吊り橋。なんやかんやあって、智恵子は吊り橋から落ちてしまうのです。
館見
なんやかんやって!?
シネマネオン
それを遠目で見ていた猛は、驚いて吊り橋の方に走り寄る。すると震えている兄の稔がそこにいたのです。
館見
なんやかんやって何があったん!?
シネマネオン
これは事故なのか、事件なのか。裁判が開かれることになります。
館見
なんやかんやを教えてくれ!そしたら事故か事件なのかわかるでしょう!
シネマネオン
何度も面会に行く弟の猛と、徐々に豹変していく兄の稔。
館見
自由に生きてきた猛と、真面目一徹で色々な事を我慢してきた稔。
シネマネオン
猛は最初のうちは稔をかばうつもりでいました。唯一の目撃者だったわけですが、見ていなかったと証言したのです。
館見
最初のうちは?って事は。
シネマネオン
しかし、面会に行くうちに兄の稔が今まで貯めに貯めていた鬱憤が爆発していくのです。
館見
精神的に追い込まれているんでしょうね。仕方がない。
シネマネオン
なんで俺ばっかりこんな目に合うんだよ。お前は自由で良いよな、俺ばっかり我慢しなくちゃいけないのはなんでだ!」と。
館見
ごもっともです。好きでお兄ちゃんになったわけじゃないのにね。
シネマネオン
そんな稔を見て、徐々に猛の気持ちがゆれていくんですね。
館見
あー、だから「ゆれる」なのか。
シネマネオン
この映画のすごい所はとにかく香川照之の演技力。本性がどっちなのかわからないんですよ。
館見
どっちとは?
シネマネオン
相手を想って突き放す為にひどい奴を演じているのか、それとも心底嫌になってひどい奴になってしまったのか。
館見
なるほどね。
シネマネオン
しかも物語の見せ方も真実がどれなのかわからないように展開していく
館見
見せ方?
シネマネオン
普通なら、映像で見たものはすべて真実だと思って視聴者はとらえますよね?でも、同じ出来事が二通りで映像化されていたら、最初に見たものとあとで見たもの、どちらが本当なのかわからなくなる
館見
あー、芥川龍之介の藪の中状態だな。
シネマネオン
そういう見せ方をしてくるんです。事故で智恵子が吊り橋から落ちるシーンもあるし、稔が智恵子を落としたシーンもある。だからどっちが本当の話なのか、視聴者はわからない。
館見
ふむふむ。
シネマネオン
その不安定な浮遊感が魅力的なんですね。こっちの感情もゆれるゆれる。それを生み出せる香川照之の演技力、半端ないです!
館見
とりあえず伝わってきたのは、香川照之がすごいって事で良いね!
シネマネオン
アジャラカモクレン、レビューラビュー、テケレッツのパー
館見 放題
アァ、消える……

映画『ゆれる』の批評を終えて

館見 放題
香川照之がすごいって事で良いね!…ん?あれ?ここは?あ、ポスターの前か。
館見 放題
あー、今回は『ゆれる』推しなんだな。このポスター貼って、次の試写会の会場に行く前に、ささっとスタミナ丼を食べに行かなくちゃ!あー。腹が減ってきたなぁ。マヨネーズたっぷりで!!
館見 放題
それにしても、この「映画名作レビュー戦記シネマネオン!」とかいう知らない映画の前売り券を支配人にもらったけど、どうしよう…。一緒に見に行ってくれる人なんていないしなぁ…。

映画『ゆれる』の名言・心をざわつかせた言葉

東京のガスでね、頭が濁ってんの。

自白っていうのはね、強力なんだよ、日本では。

まー、あのスタンドで一生生きていくのも、この檻の中で生きていくのも大差ないなー。馬鹿な客に頭下げなくていいだけこっちのが気楽だ。

結構な内出血起こしてましたよ。あれは死んでからでも痛いんちゃうかな?アーチェリーの選手見たら的や思って撃ちますよ。

お前は俺の無実を事実と思ってる?違うでしょ?

はじめから人のことを疑って最後まで一度も信じたりしない。そういうのが俺の知ってるお前だよ。

奪いっぱなしですか?それで、あんたは何を手に入れたんです?

動画視聴で『ゆれる』を実況・解説!

シネマネオン
今回の動画実況はDVD版を観て行っています。
  • 0:02:05頃
    エンジンがついてニヤリ。オダギリジョー、かっけー!!FORDのレトロ車とファンキーな音楽がすごい似合ってる!
  • 0:06:15頃
    おお。この頃の香川照之、若く見えるなー。
  • 0:09:10頃
    メインで喋っている人がいるのに、ペコペコしている香川照之の存在感がすごい。
  • 0:10:20頃
    おばさんのとばっちり食らった感w
  • 0:10:30頃
    こういう人の気が付かないところで、足にひたひた雫がたれている所にフォーカス当てるのとか、文学的だわ。
  • 0:12:05頃
    意味深な“間”!こういうのが香川照之うまいんだよな。
  • 0:12:40頃
    この8ミリフィルムがあとあと効いてくるんだな。
  • 0:14:15頃
    新井浩文、ほんとに演技上手いのにもったいない…。
  • 0:18:25頃
    ウィンカーの音か、パーカッションの音かわからんが、すごい緊張感。
  • 0:20:00頃
    びみょーな表情の変化だけど、内面の怖さが伝わってくる香川照之のすごさ。
  • 0:20:50頃
    早川猛?あー、オダギリジョーの役名か。吉本ばななのうたかた/サンクチュアリと並べる所が素敵。
  • 0:21:10頃
    時計の音と包丁の音をリンクさせてる。さっきのウインカー的なやつも意図的か。
  • 0:22:25頃
    終わったらすぐに帰るイケメンあるある。
  • 0:23:30頃
    哀愁漂う背中。なぜ洗濯物たたむ姿ってこんなに語るんだろう。
  • 0:26:00頃
    表情の変化をたっぷり見せつける映画だな。
  • 0:26:35頃
    昆虫すごいぜの時の香川照之だわw
  • 0:30:00頃
    うわー。高所恐怖症の自分としては、この橋の揺れは怖い。蓮美渓谷は、津南町の見倉橋か。新潟行った時に寄ってみようかな。
  • 0:31:25頃
    こわ…。
  • 0:32:30頃
    吊り橋効果はどうした…。
  • 0:32:40頃
    突然の無音ときれいな風景が5秒ほど。スピーカーぶっ壊れたのかと思った。
  • 0:34:45頃
    この腕の傷は…。
  • 0:35:00頃
    香川照之の凄さが濃縮されてギュッとここに詰められてるシーン。
  • 0:35:25頃
    あれ!?ピエール瀧出てたんだ!
  • 0:35:25頃
    古典的だけど、ここ最近で一番ビックリしたわ。緩急すごいな。
  • 0:40:15頃
    おばさん、おばさん、おばさん…うううううで30秒使うかーw
  • 0:41:00頃
    げっぷが効くね!
  • 0:44:45頃
    深刻なシーンなのに、ホースとピアノで笑ってしまう。
  • 0:55:10頃
    「ネガティブ?そんなんじゃないよ」というセリフにゾッとする。吐息混じりの声の破壊力よ。
  • 0:56:45頃
    あえて鼻から下を映さない撮り方。
  • 0:57:55頃
    こ、こわー!香川照之、すげー!
  • 0:58:35頃
    ここでキム兄かーw
  • 1:00:35頃
    あれ?この筆記の人、安藤玉恵じゃん。この映画に出ていたのか!!
  • 1:03:25頃
    ここらへんから藪の中っぽくなってくる。
  • 1:05:30頃
    何も言葉を返してあげないのか…。
  • 1:06:50頃
    早川勇は父だよな。これを返すためにユニフォームを口実にしたのか。
  • 1:07:40頃
    懐かしい二槽式洗濯機。
  • 1:09:30頃
    体を張った蟹江敬三w
  • 1:13:20頃
    キム兄の声と目線って人を追い込むのに最適すぎると思えるシーンだわ。
  • 1:18:05頃
    え!?
  • 1:22:40頃
    こんな検察官嫌だわ。すげーえぐってくるな。キム兄流石だわ。
  • 1:23:20頃
    裁判って何から何までおっぴろげになるのな。
  • 1:27:35頃
    死んだ魚の眼のドアップ!!
  • 1:28:30頃
    この香川照之の「うん」の存在感、すこぶるすごいな。
  • 1:30:15頃
    人が変わるとはこの瞬間の事を言います。
  • 1:38:25頃
    蟹江敬三、すごい迫力。
  • 1:39:50頃
    なんか、途端にみんな老けちゃったな。…あ、七年後か。
  • 1:43:45頃
    どーでもいい事だけど、この女の子、左利きだな。
  • 1:47:30頃
    伊武雅刀がヒゲダンスをしてるw
  • 1:49:55頃
    涙の意味がぜんぜん違うと思うけど、なぜかシネマ・パラダイスのラストを思い出してしまった。
  • 1:52:05頃
    ここで「行きましょう」って言える洋平くんの人柄の良さ。
  • 1:56:10頃
    このタイミングの笑みは演出がすごい。どっちだったんだ。

映画『ゆれる』 – オチ・エンディング・ラストの感想・考察

ここから先はネタバレを含む場合がございます。まだこの作品を観ていないあなたはこのままページを閉じるか、覚悟の上でお読みください。

by シネマネオン


ここから

この映画のミソは、渓谷に行く前日の夜の事。猛と智恵子が性交渉の後に帰ってきた時に稔が言った一言がポイントになっています。

智恵ちゃん、結構あれ、しつこいだろ

真顔になる猛。

その後、ちょっと間をあけて、

酒飲みだすと

ってカマをかけるんですね。

猛は智恵子との関係をバレて欲しくない為に、話合わせで「飲めるんだね、あー見えて」って嘘をつきます。

ご飯食べてくるって話で智恵子を送って行ったわけですからね。

でも、稔は智恵子が下戸なのを知っていますから、ここで気が付くわけです。あー、ご飯食べに行ったわけじゃないんだな。家で性交渉でもしてきたのかなと。

だからすぐに「風呂は良いか?」って切り返すわけです。

そして猛も智恵子の家で風呂に入ったにもかかわらず「いや、入るよ」って返します。

香川照之が洗濯物をたたんでる背中が印象的すぎて見過ごしてしまうと思いますが、稔は探りを入れていたのです。

でも、裁判の時には言わないんですね。

検事が稔に問います。

他の男性と性交渉を持ったのだろうと。被告人、聞きますが、あなたはこの相手の存在に気づいていましたか?

そして稔はこう答えます。

そんな人がいたなんて、僕は全く気づかず、恋人がいらしたならば、その人に対しても、取り返しのつかないご迷惑をおかけしました

と。

猛と智恵子の関係を知っていたにもかかわらず。これで一気に裁判は稔有利な展開になるんですね。

しかし、気が気でないのは猛の方です。猛は智恵子が下戸である事を父から偶然聞いてしまっていたのです。

そして兄と何の気なしにした会話「智恵ちゃん、結構あれ、しつこいだろ」の事を思い出してぞっとします。兄は智恵子と自分の関係性を知っていたに違いない。

そんな心境の中で兄を擁護する証人として法廷に立たなければならない。

しかも兄の元へ面会に行ったときに言われるんですね。

稔「だってさ、お前は俺の無実を事実と思ってる?違うでしょ?自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだよ

(中略)

猛「ちょっと待ってよ、なんで、なんで俺が自分の兄貴のこと疑わなきゃなんねーんだよ

(中略)

稔「初めから人のことを疑って、最後まで一度も信じたりしない。そういうのが俺の知ってるお前だよ、猛

猛「ふざけんな!

この段階でもう二人の兄弟仲は決裂。

そして猛は裁判所で兄稔を有罪にしてしまう証言をするのです。

ただ、これを一度考えてみるとこれもすべて兄が弟のことを思ってやった事なのかもしれないなんて考えちゃうんですね。

「智恵ちゃん、結構あれ、しつこいだろ」

って言葉の通り、智恵子は猛に執着していました。それを疎ましく猛は思っていたと思うのです。

それをまぁ、偶然といえ、事故で稔は智恵子を殺してしまいます。

これが事故である事は、稔の腕の傷が証明してくれているとは思うのですが、猛はその腕の傷には触れず有罪に持ち込む証言をします。

稔的には悪を全部自分が背負うことで、弟の今後の人生に智恵子との出来事を引きずらせない優しさを見せたのではないかと僕は思うのです。

もちろん「なんでいっつもお前だけ」と猛を羨ましく思っていた気持ちもあるでしょう。

しかし、やっぱりそこは兄。

自分を殺して弟を立てる優しさの現れが、この映画の香川照之の演技には詰まっている気がするのです。

シネマネオン
これがネタバレだと言うのか…!?

映画『ゆれる』のような映画・似てる作品・おすすめ

真実の行方
4.3

公開日:1996年04月03日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画, ミステリー映画
監督:グレゴリー・ホブリット
出演:リチャード・ギア, ローラ・リニー, エドワード・ノートン

シネマネオン
1996年の映画『真実の行方』か!
館見 放題
エドワード・ノートンの演技と香川照之の演技、質は違うとは思いますが、本音はどっちなの!?って観ていてもわからない浮遊感ある絶妙な演技に通じるものがあります!

映画レビューまとめ


ども。シネマネオンの中の人、野口明人です。

あの橋を渡るまでは、兄弟でした。

というキャッチコピーの通り、橋での出来事が二人の関係性をゆらす映画でした。

「ゆれる」

というタイトル、本当に秀逸だと思うんですよね。

橋。関係性。感情。信じる疑う。本音と建前。

とにかく映画のちらほらにゆれる要素が散りばめられています

なので、観終えた後も沢山の解釈が出来る映画なのです。

まぁ、まとめとして、ミステリーやサスペンス映画と単純に言ってしまうにはもったいない程の完成度で、とにかく香川照之の演技が神がかっています。最高峰の演技でしょうコレ。

オダギリジョーもかっこいい。西川美和監督の演出も素晴らしすぎる。すべてにおいて世界観が現れていて、この映画を観ずに邦画を語っちゃいけないと思えるぐらい、邦画の素晴らしさが前面に出ています。

ブランコ?というよりもシーソーかな?とにかく遊具がゆれているシーンがあるんですけど、それとともにオダギリジョーが語っているんですよ。

それでその語りが終わるぐらいに、遊具のゆれも収まる。そして、次の行動に移る。

そのタイミングがバチコーンはまっていてね、この監督が持つ繊細さみたいなのを感じさせられました。すげぇよ、とにかく、この映画。

ラストの後味の悪さも狙っているんでしょうね。このラストしかないっしょってぐらい、僕の中ではぴったりはまったラストだったので、もう、文句なし。

あぁ、なんでこんな感じの邦画を早く見なかったのかな。そうしたらもっともっと映画を楽しめていただろうに。これからは邦画ももう少し真面目に観てみようかと思います。

あなたはこの映画を観て、どのような感想を抱くでしょうか。

僕とは全然違う解釈かもしれませんし、僕の言ったことに共感してくれるかもしれません。良かったらコメントに書いてくださるとうれしいです。

ではでは、そんな感じで『ゆれる』でした。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!

野口明人

あ、最後に『ゆれる』のレビュー点数です↓


ゆれる - 感想・評価

ゆれる
4.0

公開日:2006年05月24日
ジャンル:犯罪映画, ヒューマンドラマ映画
監督:西川美和
主演:オダギリジョー, 香川照之, 伊武雅刀

ゆれる
  • ストーリー - 73%
    73%
  • キャラクター - 88%
    88%
  • 演出 - 86%
    86%
  • 映像 - 75%
    75%
  • 音楽 - 73%
    73%
79%

映画レビューまとめ

邦画も捨てたもんじゃないと考えさせてくれる良作。香川照之の演技がもうすごいのなんのって。視聴者とはどの立ち位置なのかを問いかけてくる所も素晴らしい。

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